ジェンダー&エスニシティ班は、国民国家間の政府関係を中心とした従来の枠組みを超え、より複雑な関係性を問う観点から、対立と和解の双方の力学を明らかにすることを目的としている。本班は、アフリカ、東アジア、南アジア、中東、カリブ海地域、ヨーロッパを含む広域を対象とし、多様な主体の相互作用を通じて形成される複雑な関係性を分析する。その理論的中核には、酒井啓子氏によって提唱された「エンベディッド・リレーションシップ(embedded relationship)」の概念を据え、従来の国際関係研究では十分に扱われてこなかった感情や集合的記憶といった要素を含め、多様な世界的現象の背後にある構造とプロセスの相互作用を捉える。
こうした研究枠組みに基づき、国際和解学叢書において本班は、アイデンティティ、記憶、そして和解の相互作用を主題とした英語編著の刊行を進めている。本書は、ジェンダーやエスニシティを含む多様な主体のアイデンティティの変容が、紛争後および脱植民地後の和解の過程にどのような影響を与え、また和解の過程が主体の認識や関係性をいかに変化させるのかを、理論的・実証的に明らかにすることを目的としている。特に、(1) 埋め込まれた関係性の中での社会的集団カテゴリー化の起源、(2) 社会集団をめぐる人権言説に対する歴史と記憶の影響、(3) エンベディッド・リレーションシップが第三者および社会全体に及ぼす影響、(4) 時間の経過に伴う関係性の変容、という四つの分析視角を導入し、主体間の関係の形成・変容の過程を多角的に検討する。
本書は、複数地域にわたる比較事例研究を通じて、国家中心的な従来の国際関係研究を補完するとともに、主体間の相互作用に着目した新たな視座から、現代世界における対立と和解の力学を理解するための理論的・実証的基盤を提供することを目指している。

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